— 4.入社2か月で配属替え —
私は工業高校を卒業して直ぐに某電気メーカーに就職しました。
当初は、交換機(クロスバー方式)の配線ハーネスを製作しておりましたが、その内容はヘッドホンから流れてくるテープレコーダーの指示に従って目の前の大きな板に打ち付けられた釘の番号から次の番号へと配線ケーブルを渡し、最後に結束を行う、いわゆる人間ロボットの様なものでした。
私は、この仕事に不満を持ちつつも色々な事情から我慢をしつつ、ひたすら人間ロボットとして仕事を、こなしておりました。
そんな折、入社して1か月ほど経過した頃だと思いますが、会社から新入社員へのアンケート調査がありました。
そのアンケートは与えられた仕事に対する感想が主でしたが、最後の項目に支持する政党は、どこですかとの質問がありました。
私は特に支持する政党はありませんでしたが、その頃、沖縄県にだけ存在した「人民党」と、なんとなく記入しました。
当時は学生運動が盛んで大学生を中心に政治的なデモ活動やビラ巻きが盛んに行われ、その矛先は大手企業にも向けられ企業側も、その対応に敏感になっておりました。
後で知った事ですが人民党は日本共産党の友党との事で私は、アカのレッテルを貼られたものと思われます。
それが原因なのか知る由もありませんが、暫くして私は別の工場に配属替えとなりました。
その工場の建物は明治時代に建てられており、確か3~4階建で天井が高く丸柱の太さは直径1メートル近くあったと記憶しております。
その重厚さは今でも私の記憶の奥にあり明治時代に、これだけの建物を建てた技術力とエネルギーに圧倒されるばかりでした。
その大きな建物は空襲で、殆どの建物が損壊を受け、焼け野原となった東京で粗、完全な形で残った貴重な建物でしたが残念な事に、私が知らぬ間に取り壊されておりました。
因みに取り壊すにあたり、建物が丈夫過ぎて、かなり困難な解体工事になったと後で聞いております。