— 10.考えるな、感じろ —

沖縄営業所に転属された私の業務として南西航空の無線機は定期点検を行っており、飛行機が飛んでいる離島には何度も足を運んでおります。

その離島でのエピソードが幾つかありますので、ご紹介したいと思います。

 

沖縄県が復帰した当時は電話網の整備が遅れており一般の家庭は、もちろんですが企業でも電話の導入には四苦八苦しており、その時代、電話の債権が100万円程度で売買されていた事もあります。

沖縄本島でも、その様な状況ですので離島に航空路線を開設している南西航空では通信回線を確保するのに苦労していたと思います。

その手段として導入したのが短波無線機であったのでしょう。

南西航空は那覇空港を起点としておりますが、石垣島の周辺離島には石垣空港を中心に路線を開設しており、石垣空港の通信設備は非常に重要な役割を果たしておりました。

ところが、その石垣島の事務所から、通信が不安定になるとの連絡が度々入りました

当初は、空中における電波環境の影響だと思いながらも石垣島にその都度、飛びました。

しかし、自然復旧していたり天井近くにあるアンテナとの結合部(バリアブルコンデンサ)を、少し調整するだけで復旧したりしました。

結局、根本的な原因をつかむ事が無く、何度も同じ事を繰り返しておりましたが、ある日、

そのアンテナ結合部を上から見ると設置工事の時に落としたと思われる半田くずが、その電子部品の上に落ちている事を発見しました。

恐らく、この半田くずが湿気の高い日に結合部の調整値を変化させていたものと思われます。

この不具合の対処について、私は技術者としての基本を忘れていたと思います。

得てしてエンジニアは技術的な面から問題を解決しようとしますが、基本は人間の持っている感覚を使う事です。

それは視覚、嗅覚、聴覚、触覚が大事だと言う事ですが、意外と技術者は、その感覚より自分の技術を優先しがちです。

しかし、技術屋が手を焼いている不具合でも、技術をもちあわせていない人が、その感覚で発見する場合があります。